個人再生で債務整理する中でよくぶつかる疑問点について(2)

先回に続いて、個人再生で債務整理する場合の疑問点について見ていこうと思います。

今回は保証人の問題、個人再生を計画どおり返済できなくなった場合について見ていきます。

個人再生すると保証人がいる債務は一括弁済を請求される?

個人再生は任意整理のように債務整理する事案を任意で選べません。そのため自己破産のときと同じで、保証人がいる場合は、債権者から一括弁済を求められます。このため自己破産同様、保証人がいる場合は、保証人に債務整理した事実を伝えなければいけません。

ただ、一括弁済を請求されても、分割返済を承認されることがあります。分割返済で返せるなら、それに従うことです。ただし、分割返済が認められない場合は、保証人ご自身も自己破産しなければなりませんので注意してください。

個人再生の返済期間に計画通り返済ができなくなったらどうなる?

近年では不景気の煽りを受けて、3年から5年という短期間でも、計画通り返せなくなる方も増えています。
この場合、債権者側は、再生計画取消しの申立てを実行できます。再生計画取消しが裁判所で認められると、再生計画認可決定による減額や分割払いも取消しとなり、債務者は言わば元の状態に引き戻ることになってしまいます。そのため、個人再生では再生計画が取り消される前に、再生計画の変更を申し立てられます。

ただし、再生計画の変更の申し立ては、再生計画が取り消される前でなければ認められないので、気をつけなければなりません。また再生計画の変更は2年を超えない範囲で延長してもらえますが、それなりの事情が必要で、いかなる場合も延長できるわけではありません。この点も注意が必要です。


また、再生計画の変更の申し立て以外の方法として、ハードシップ免責ということも残っています。このハードシップ免責とは、弁済計画の4分の3以上をすでに支払い終わっている場合に、支払いを免責されるものです。ハードシップ免責も再生計画が取り消される前に申し立てる必要があります。

なお、ハードシップ免責が行われると、個人再生の住宅を守りながらの債務整理の利点がなくなり、家を失うリスクが生じてしまいます。どうしても家を無くしたくなければ、ハードシップ免責は選ばないことが大事です。

 

個人再生で債務整理する中でよくぶつかる疑問点について(1)

このブログでも個人再生について、基礎的情報はほぼ網羅してきましたので、ここでは債務整理を個人再生で進める中、よくぶつかる疑問点についてみていきたいと思います。

個人再生は車を手放さなければならないか

個人再生は住宅を守りながら債務整理できる方法ですが、車も所有したまま個人再生できるかは、車好きの方から相談されることが多い質問です。

結論から言いますと、ローンを払い終えていない車の所有者は信販会社などの債権者にありますので、この場合は債権者に引き上げられてしまいます。ただ、ローンが終了している場合は、車は手放さずに乗ることができます。しかし車の清算価値が大きくなると、再生計画案の返済額が高くなる場合があることは理解しておかなければなりません。

個人再生は保険も解約しなければならないか?

保険もよく聞かれる質問です。保険は掛け捨てと解約返戻金がでる場合と大きく二つに分かれ、解約返戻金がある保険は解約しなければならないと聞くと思います。ただこれは、自己破産の場合であって、個人再生ではかならず解約しなければならないわけではありません。

ただし、この場合も清算価値が大きくなると、再生計画案返済額が増えることがありますので注意が必要です。

清算価値とは先週の記事でもお伝えしていますが、債務者が破産していたら得れたかもしれない額のことです。つまり、車や保険の解約返戻金というのは、当然ですが自己破産していたら債権者が配当を受けるべき金額です。

個人再生では、清算価値を保障する原則があるため、債務者の清算価値が大きくなれば、再生計画案の返済金額もあがるということです。

 

 

個人再生の最低弁済額と清算価値とは

個人再生で少し理解しにくいところが、最低弁済額と清算価値保証の問題です。ここでは、その問題をわかりやすく解説しています。

最低弁済額は法律で決まっている

個人再生は民事再生法で認められた個人向けの借金救済制度です。そのため最低弁済額も民事再生法で決められた基準があります。

民事再生法で決めている最低弁済額は、もっと大きな金額もありますが、個人の債務者ですから借金総額は1,000万円以下におさまっているはずです。そこで最低弁済額も、1)100万までは減額なし、2)100万〜500万円までは100万円まで減額、3)500万〜1500万円までは5分の1まで減額、というところを覚えておけばこと足りるでしょう。

ただ、最低弁済額はこれだけでは決まりません。個人再生の最低弁済額が難解に感じるのはこのためです。

最低弁済額を上回る場合は清算価値が最低弁済額に

では、もう少し突っ込んでみてきましょう。

じつは、最低弁済額を決める条件はもう一つあります。それは清算価値が最低弁済額を上回る場合は、清算価値を最低弁済額とするということ。ですから、現時点では、比較値としての最低弁済額を出しているに過ぎないということです。

清算価値とは、負債ではなく手持ち資産を換価した場合の金額です。個人再生の場合は住宅ローン特則を使っているケースが多いので、家を除く全ての資産です。これが、比較値としての最低弁済額を上回る場合は、清算価値が最低弁済額になります。

少しややこしいですが、なぜ清算価値が最低弁済額になるかというと、そうしないと、債権者にしてみれば自己破産してもらったほうが、トクだからです。また、そうしなければ、再生計画案に同意してくれる債権者もいなくなってしまいます。

最低弁済額を上回る清算価値がある場合、清算価値を最低弁済額とすることには、そのような意味があるわけです。

 

個人再生の給与所得者等再生は本当にトクなのか?

個人再生はある程度収入が見込める方にすすめられる債務整理ですが、個人再生は小規模個人再生と給与所得者等再生の二つがあるのはご存知でしょうか。

個人再生と言うと、小規模個人再生の言い方が代わって個人再生と言われているのではという人もいると思います。確かにそうした誤解をしている方が多いと思いますが、個人再生には給与所得者等再生もありました。

 

小規模個人再生と給与所得者等再生の違い

二つの違いは、給与所得者等再生が自営業の方は利用できないようになっており(小規模個人再生は自営の方、歩合比率が高い方でも利用できる)、且つ、より安定した給与が見込める公務員や会社員が使えるのが、給与所得者等再生となっています。

具体的には、債務の減額が小規模個人再生では債権者の同意が必要になるのですが、給与所得者等再生では不要だということと、給与所得者等再生では最低弁済額(返済する必要のある最低額)に法定可処分所得の2年分以上という項目が加わるということです。

どちらを選択するかについては非常に難しい問題で、最終的にどちらを選ぶかはアディーレなどの担当弁護士に任せるのがいちばんです。

ただ、基本的には給与所得者等再生が選択できる安定した収入がある方でも、ほとんどのケースでは小規模個人再生を選択していますし、実際にそのほうが返済額を考えた場合にお得になることが多いようです(ということは、給与所得者等再生を選んだほうが良い方もあるということです)。しかし、その判断はケースごとに違いますから、それぞれの弁護士に確認してみれば良いでしょう。

また、給与所得者等再生は、債務の減額に債権者の同意が必要ではないため、なにか特別な事情から、債権者から過半数以上の同意を得られない場合は非常に助かります。給与所得者等再生のメリットは、おそらくここにあるのだと思います。


いずれにしても、個人再生は借金も多いが、収入ももらっているという方が対象となる債務整理です。収入が不安定な方は、自己破産など別の方法を検討しなくてはなりません。

 

 

自宅を手放さず債務整理できる個人再生の住宅ローン特則を利用する条件とは?

個人再生は債務整理のなかでも比較的条件が厳しい方法ですが、借金があっても収入がある方は、自己破産せずに債務を圧縮できます。

また、一概には言えませんが、借金があっても収入がある方というのは人生のなかでもっとも高額と言える住宅ローンを組んでいる方が多いです。このような方におすすめなのが個人再生です。

なぜなら個人再生は、住宅ローン特則を使って債務整理できるからです。つまり、住宅を競売にかけずに債務整理ができるのです。もちろん、弁護士法人アディーレでもこの個人再生を扱っています。

住宅ローン特則はすでに代位弁済が実行していたら注意しよう

では、個人再生の肝とも言える住宅ローン特則にも条件がありますので、その条件について見ていきましょう。

まずローン返済中の住宅はもちろん個人再生の申立人が所有する住宅だということが大前提で、なおかつ自分で住んでることが条件となります。また、細かく言うと店舗併用の場合は、住宅部分の床面積が全体の半分以上が居宅部分である必要があります。つまり、事務所や店舗は該当しないということです。

そしてローンについては、住宅に抵当権が設定されている有担保ローンでなければけません。住宅ローンについてはおそらくほとんどの方が、土地建物に担保設定されているはずですから、この点では問題はないはずです。

また、いちばん注意しなければならないのは、住宅ローン特則が使えるのは、保証会社の代位弁済から6ヶ月以内と決まっています。したがって、長期間悩んだ末、いざ個人再生したとしても、たとえそれなりの収入があってもこの6ヶ月を過ぎると、住宅ローン特則が使えなくなりますので注意してください。

 

司法書士が扱える債務整理は「個別債権価額140万円以下」に決着!

一般に債務整理をお願いする場合、古い人は弁護士に頼むことが多いようですし、アディーレなどの弁護士法人も誕生したことで、一般市民も借金相談を弁護士に依頼するケースが確実に増えました。ちなみに、この変化はわずか10数年前のことです。

それと同時に、2002年には司法書士法が改正され、法務省が認めた認定司法書士は債務額が140万円以下の訴訟・和解が認められるようになりました。ご存知の通り、以来、司法書士の活躍の場は拡充し、司法書士の仕事は債務整理がほとんどではないかと思っている方も多いはずです。

ただし、この認定司法書士の制度は、2000年当時に多重債務者問題をより効率的に解決するべく創設された制度で、弁護士の仕事を横取りするような制度ではもちろんありません。

しかし、日司連と日弁連で、改正された司法書士法の解釈が異なっていたことが、長い間の問題となっていたようで、その決着が最高裁の判断でつきました(2016年6月27日、最高裁第1小法廷)。

140万円は依頼者が受ける利益か個別の債権の価額か

これまでの争点は、「弁済計画の変更などで依頼者が受ける利益が140万円以下であれば受任できる」との解釈で、実際に債務整理を行ってきた日司連に対し、日弁連は「債権額が140万円以下に限られる」と主張。

最高裁判決は、「債務整理を依頼された認定司法書士は、債務整理の対象となる個別の債権の価額が140万円を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない」と結論づけました。つまり「依頼者が受ける利益が140万円以下であれば受任できる」とする日司連側の主張を退けたかたちです。

ただ、最高裁は140万円という金額を個別の債権の価額にも認めております。つまり、認定司法書士が扱える事案は、債務総額140万円までとはしていません。ウェブサイトによっては、債務総額140万円までを、認定司法書士が扱える事案ではと記しているものも見かけられ、記事を書く立場としても正直揺れ動く問題でした(ここまで明確な結論が出たことに、ほっとしています)。

個別の債権の価額が140万円以下ということは、認定司法書士側も簡易裁判所で扱えるほぼすべての事案を代理できます。この判決を機に、認定司法書士にも、これまで以上の仕事に期待したいところですね。

 

ETCパーソナルカードは債務整理した人に優しいか?

債務整理をしてもデビットカードがあれば大概のクレジット系支払いはカバーできると思います。ただクルマに乗る人はETCカードがあると便利ではないでしょうか。

デビットカードがあれば、これが代わりになると思う方もいるでしょうが、デビットカードはETCに対応していません。だったら現金で対応すれば良いのですが、やはりカードがあれば便利ですね。そこで、審査なく債務整理している人でもつくれるカードとして、ETCパーソナルカードがあります。

ETCパーソナルカードは、有料道路の支払いに限定したカードで、高速道路6会社が共同で発行しています。つまりクレジット機能は、カードついていません。よって厳密な審査もなくカードをつくれます。有料道路の支払いに使えるデビットカードと思ってもらうと良いでしょう。

ETCパーソナルカードはデポジット負担が重すぎる

ただこのカードが厄介なのは、そこそこ大きなお金をデポジットしなければならない点です。デポジットとは保証金のことですが、ETCパーソナルカードでは平均利用額の4倍をデポジットしなければなりません。月の使用料が5,000円の場合は20,000円で済みますが、月の使用料が20,000になると80,000円のデポジットをしなければなりません。

また、仮にデポジット2万円の方で、口座振替によるデポジット増額ができない場合は自動的にETCパーソナルカードは使えなくなってしまいます。この辺は、債務整理したばかりの人には、とくに使いにくいところだと思います。

筆者は今クルマを使っていないので詳しいことはわかりませんが、債務整理をした感覚から言うと、余程のことがない限り、ETCパーソナルカードは使わないのではないかと思います。

クルマは維持費の点でも、持つだけで負債となる資産です。タバコと同じように、クルマも手放す人は今後益々増えていくのではないでしょうか。